桑野造船株式会社
お問合せ ご注文 見積依頼 ダウンロード 会社案内 
ボートオールカヌー・ドラゴンボートパーツ関連商品コース・施設記念品コラム
 
ボートの外皮の基礎知識
ボートの外皮(以下Skin)の材料は昔の木材の合板から現在はFRP(繊維強化プラスチック)の場合がほとんどです。Skinの材料と構造および工法によって性能と製造コストは変わります。一般的に現在採用されているボートのSkinの基礎知識を紹介します。

まずSkinの解説を構造と工法に分けて説明します。
構造別にはサンドイッチ構造単板構造(Single Skin)があります。また成形工法にはwet(hand lay up)dry(pre-preg)があります。
構造の種類
●サンドイッチ構造

ハニカムとか発泡体で作られた軽量の芯材をサンドウイッチ状にFRPではさみ込んで作ります。重量はそれ程増加させないでSkinの厚みをましてSkinの剛性向上をさせるものです。板状の構造材は厚みが増すと厚みの2乗に比例して剛性が高まります。

ただ、ボート全体の剛性はSkin剛性だけで決まる訳ではありません。断面構造とか縦方向の構造によって総合的に決まります。

FRP繊維素材はガラス繊維(廉価、重い、弱い)、アラミド繊維(強い、低剛性、弱耐候性)、カーボン繊維(高価、高剛性、強い、衝撃に対しもろい)の3種類がほとんどです。

あと、FRP用樹脂にはポリエステル樹脂とエポキシ樹脂がよく使われます。樹脂にプラスチック製の小さい空洞の球体(マイクロバルーン)を混合して樹脂重量を軽減する手法もあります。

コア材は樹脂を原料としたハニカムか発泡体を使います。日本ボート協会の規格艇は価格とメンテナンス性を考慮して発泡体のサンドウイッチ艇が主流です。航空機とか高級家具は更に強度が必要なためにアルミ製のハニカムを使います。桑野のナックルフオアにも採用しています。


●単板構造

FRPのみの単板(Single Skin)です。Skinの強度はありますが、厚みが薄いために剛性はそれほどありません。

この単板は厚みの3乗で剛性は高まりますが厚みが大きくなると重量が比例的に増加して、剛性を高めるために厚みを増すのは適当ではありません。

従って指でおせば柔らかく凹むくらいの厚みでボートのSkinの強度は充分です。

製造行程が単純で材料も少ないために安いのが利点です。艇全体の剛性は艇断面構造材等で補強しますがサンドウイッチ構造に比較すればいくらか低剛性艇の出来あがりとなります。

初心者向けの艇を中心に採用されますが実用上特に問題にはなりません。日本では高級嗜好が強いのでみんなはサンドウイッチ構造艇が多いです。高い剛性を求めないのであれば単板構造艇でボートとしての機能は充分です。欧米ではこちらの方が一般的です。
工法
●Hand lay up

成形型に繊維を敷いて、その上から樹脂を手作業で塗り込んで含浸させたあと常温硬化させます。液状の樹脂を手作業で積層しますのでwet lay-upといいます。漁船やバスタブも同じ工法です。

樹脂と繊維の重量比率はFRPの性能と重量を決めます。工員の技量が製品の出来を左右します。競技用ボートでは重量と強度、剛性が重要なので工員の技量は重要な要素です。しかし、樹脂と繊維の比率は1:1が限度です。樹脂が多いと重くなり、少ないと繊維の特性が生かせません。

製作費は安価ですが軽量化には限度があります。もちろんサンドウイッチ構造も単板構造も艇の製造ではこの工法によるFRP形成が一般的です。夏期の屋外等で使用時の形状安定のために80℃程度のオーブンに入れて硬化させる場合があります。

●Pre-preg使い

繊維製造工程で精密に機械でコントロールしながら予め繊維工場で樹脂を含浸させます。新しい材料で高価です。これは常温そのままでは硬化するためにボートメーカへは冷凍庫で運搬、保存します。

樹脂と繊維の重量比率は3:7位にコントロールされていたり、繊維の方向が整っていますので極めて軽量のFRPが製作可能です。成型はhand lay upと同じように成形型にpre-pregを敷いて高温加熱硬化させます。

pre-pregは乾いた状態ですのでpre-preg carbon のことをdry carbonともいいます。従って作業環境はクリーンです。pre-pregの切断も艇形状に合わせてコンピュータ制御のカッティングマシン(洋服の原反裁断機と同じ)がよく使われます。

但し、裁断機、冷凍庫、高温硬化オーブン、高温用のボート成形型等々の高額な投資が必要で製品は高価となります。航空機をはじめゴルフクラブ、テニスラケット、釣り竿そしてボートのオールはこの工法で作られています。
構造と工法の組み合わせ
●安い組み合わせ
→ hand lay up の単板構造艇
→ 廉価、重い、低剛性(トレーニング艇)
●一般高級艇
→ hand lay up のハニカムサンドウイッチ構造
→ 高剛性(桑野、エンパ・フイリッピ社の標準レース艇)
●超高級艇
→ pre-preg のハニカムサンドウイッチ構造
→ 軽量、高剛性、高価(桑野WINTECH・ハドソン社のモノコック艇)
桑野造船株式会社  〒520-0357 滋賀県大津市山百合の丘10-1 TEL 077-598-8090 FAX 077-598-2505 E-mail kuwano@k-boat.co.jp