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香川 友歩 ◆2006全日本選手権先月行われた全日本選手権において, に桑野自社製1×を使用していただきました。今回の艇はT氏のリクエストに応じて補強を加えた特別仕様艇です。製作に到るまでの過程と実際この艇を使用したT氏の感想を合わせて報告させて戴きます。 製作にあたってベースとなる艇は弊社のA1です。製作コンセプトとしては剛性分布の平均化を掲げました。具体的な数値目標としては
さらに樹脂もハニカムに対するフィレットを形成しやすい物にしてFRPの繊維体積含有率を上げ、結果として起こる樹脂重量軽減による重量利得をメインスキンの目付上昇にまわして剛性向上を狙いました。 結果として艇重量14.3s、剛性値は縦、横共に既存艇を20%程上回り、剛性という点ではフィリッピのみならずエンパッハをも凌駕していたので、この面については自信を持ってT氏にお渡しできると思いました。 そして私はレース前日から本番終了までT氏のサポートさせていただく中で、氏から鋭く貴重な指摘を沢山頂きました。T氏の感想を端的に表現すれば「確かに堅い艇だが色んな力の方向に対して対応できているわけではない。」ということでした。 私にとってこれはある程度予想できる感想でした。確かに縦、横の剛性値は高いのですが、ボートに掛かる力はそれだけではありません。それは造る前からわかっていましたがそれを表現する測定方法が現在のところありません。今回あえて我々の得意分野をT氏にぶつけてみたのですが、T氏はそれを受け止めてくれた上で更に上のレベルの要求をして下さいました。 氏の要求は具体性を帯び、かつ明解なものでした。これが選手のメーカーに対するフィードバックというものなのだなと初めて実感した次第です。T氏は大きなレースを抱えながらも本番終了まで様々な注文や感想を出し続けて下さいました。氏には本当に感謝しています。ボートについてここまで分かる人とディスカッションを続けてこの先造りこんで行けばいつか必ずいいものが出来ると思いました。 決勝に向かうランディングでT氏に「絶対勝ちますから見ててください!」といわれた時は思わず胸が熱くなりました。そしてT氏が決勝のゴールラインを駆け抜けた時は嬉しくも正直ホッとしました。A1もずいぶん重いものを背負って無事走り続けてくれたものです。彼女も緊張の毎日だった事でしょう。T氏とA1に改めて感謝します。 余談になりますが私がT氏に対して一番驚いた事は、氏が繊維の切れ目の箇所を言い当ててしまうことでした。乗艇後「ここで切れますね。何か入ってますか?」といわれた時に、切れ目はミッドシップからかなり距離があるから分かるわけがないと、にわかには信じられなかったのですが、図面を確認したらまさにそこで切れているのでした。UDをフェードアウトさせていなかったからわかったのでしょうか。 残念ながら今回の製作コンセプトである「剛性分布の平均化」についてクリアーすることが出来ませんでした。今後はどれだけ補強をどれだけフェードアウトできるか、またどれだけ断面のギャップを平均化できるかがキーになるでしょう。 |
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