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◆バランス能力強いスカラーは基本ローイング能力が高い、ということについては、全く異論のないところであるが、バランス能力(1-β)/gAは、より複雑である。すなわち(1-β)は、スカルのハル形状から定まる特性Aとの複合特性であり、Aそのものが(1-β)を決める重要な要素として影響を与えるからである。 Aを小さくする、すなわち抵抗の小さいスカルを求めることは大切であるが、(1-β)をそれ以上に小さくしてしまっては、何にもならない。 抵抗だけでなく、(1-β)とのトータルで、すなわち、艇と漕手の全体でバランス能力を考えることが必要である。 先に(1-β) = 0.9を現実的な最大値と考えたが、(1-β)がそれを大きく下回るスカラーにとっては、A = 0.0148のスカルは乗りこなせていないので、抵抗Aを大きめにとっても、それにより艇の横安定性が増し、Aの増分よりも(1-β)の増分が上回るのであれば、その漕手にとっては抵抗の大きいスカルの方が速いスピードを得られる、ということである。 ここで、バランス能力として、クリアすべき一つのレベルを“静止ブレードアップのできるレベル”と定めてみる。 (静止ブレードアップとは、静止したスカル上で、両ブレードを水から上げて、フィニッシュからフォワード、フォワードからフィニッシュへと体重をフル移動しても、ブレードが水に落ちず、スカルを長時間水平に保ち得る事を言う。) そして、(1-β) = 0.85 が静止ブレードアップレベル、(1-β) = 0.9はさらに、波・風の外乱がきても静止ブレードアップが続けられる、パーフェクトスカラーのレベル、というように数値化してみる。 A = 0.0148のスカルで、(1-β) = 0.9が実現できると、バランス能力 = 6.20となり、このあたりが(現時点では最高レベル)、限界値となりそうである。 オリンピッククラスを目指すときは、(1-β) = 0.85 は当然クリアしなければならないので、あとはAの少しでも小さいスカルを求める、という方向になるのは当然である。 しかし、N.Matsunoのレベルは、オリンピッククラスを目指すようなものではない。N.MatsunoはA = 0.0148のスカルでは静止ブレードアップはできないし、また限られた練習時間では、静止ブレードアップのできる状態にたどりつくことはないということも現実である。(年齢により、平衡能力は大きく落ちている。) この場合、残された方法はAをどこまで大きくして、横安定の良いスカルにすれば、静止ブレードアップ、すなわち(1-β) = 0.85となるかをさぐることである。 今、N.Matsunoの現状は、前述のようにエルゴ/スカルの両データ比較から A = 0.0148 の艇の場合、(1-β) = 0.73で、バランス能力 = 5.03であった。 したがって、(1-β) = 0.85でバランス能力 = 5.03を得るためには A = 0.85/(5.03×g) = 0.0172 すなわち、抵抗を0.0172/0.0148 = 1.162と大きくしたところで、(1-β) = 0.85がクリアできるのであれば、現在の基本ローイング能力で同じスカルスピードが得られる。 (16%抵抗が増えても、横安定が増大して、静止ブレードアップができるような艇なら、今と同じタイムが出る。) これは、すぐには信じられない結論である。 N.Matsunoのケースを改めて整理してみると次のようになる。 (1-β) = 0.85ならば、 A0 = 0.0148(現行スカル)で、(1-β)/gA = 5.85 VS = 4.05 (2'03"5/500m) A2 = 0.0151(抵抗2%UP)で、(1-β)/gA = 5.74 VS = 4.02 (2'04"4/500m) A4 = 0.0154(抵抗4%UP)で、(1-β)/gA = 5.63 VS = 3.99 (2'05"3/500m) A8 = 0.0160(抵抗8%UP)で、(1-β)/gA = 5.42 VS = 3.95 (2'06"6/500m) A16 = 0.0172(抵抗16%UP)で、(1-β)/gA = 5.03 VS = 3.85 (2'10"0/500m) N.Matsunoが(1-β) = 0.85をどのハルで実現できるかはわからない。 現実的な狙いとして、 A4 = 0.0154(抵抗4%UP)で実現できるのであれば、現状より4%のスピードアップが得られることになり、感覚的にも妥当と思われる。 (500mで、2艇身強の改善となる。) ◆エルゴ特性とスカル特性:グラフ※ここをクリックすると、下のグラフと同じものがPDFで表示されます。 |
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