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◆いざ、スイスへ集合日9月2日(土)。集合場所ルツェルン。6人はそれぞれ別のフライトで現地集合。クニオさんと私は格安券のためバンコック経由でチューリッヒに飛ぶ。二人とも初めてのスイスで、空から眺めたアルプスの山々にすっかり魅了される。私は山好きで日本アルプスは随分歩いているが、白くどこまでも重畳と続く山稜に圧倒された。空港について電車に乗り換えてルツェルンに向かうが要領がわからない。電車内で困惑気味の大男がいる。もしやと思って、オアズマンか?と訊くとそうだという。最初の出会いが、このアメリカ人タッド。駅前からルツェルン湖が広がる。広くはフィアヴァルトシュテッテ湖(四森州湖)と呼ばれている大きな湖だ。湖岸に沿って漕げば全長120キロはある。それを3日間で90キロ漕ぎ進むのが前半の予定だ。クニオさんとおきまりの観光コースを歩き、カペル橋やムゼック城壁を訪ねたが、湖を見下ろしながら感慨に浸る。旧市街に降りてレストランに入りまずはビールで乾杯して昼食。湖岸に沿って歩くと静かな公園があり若者達が何やら見たこともない棒投げゲームに興じている。 間もなくたどり着いたボートハウスは瀟洒な木造の建物だ。2棟並んでいて、両方共に湖岸の別荘という趣だ。スイスには80のローイングクラブがあり、その会員数8千人という。人口740万人の国としては多いのでは ないか。その内のふたつがこのボートハウスで活動しているSeeclub LuzernとRuderclub Reuss Luzernだ。Seeは、ゼーと発音し、ドイツ語で海や湖を表す。ちなみにボートはBootと書くのもおもしろい。 ◆出会いは絶景私たちが真っ先に到着した参加者のようだが、そのうち日本からの仲間も到着し、再会を喜ぶ。クニオさんとエイジこと私は家を出てから20数時間経ってのことで疲れ気味だが、他のみなさんはルツェルン市内の立派なホテルに一泊しているので意気盛んである。ぽつぽつと参加者が集まりだし、ハウス前の広場で役員がプログラム、参加賞のTシャツ、バスタオル、それに名札を配ってくれる。名札はファーストネームだけ。ビールとワインが用意されセルフサービスで飲み食いをはじめる。近くに参加者がいるとすぐに名前を見て呼びかける。皆揃ってなかなかの社交家だ。目があったら逡巡するところがない。そして自己紹介をはじめる。こんなときは、短い自分の名前がありがたい。 過去のFISA Rowing Tour に参加した人たちは、誇らしくその大会を語り、再会を喜び合う姿が美しい。初参加組も決して腰が引けていない。スイスに来た喜びで一杯の様子。つぎつぎと握手を交わし名前を覚えようとするが自己紹介が終わった頃には忘れている。でもこの挨拶交換だけでもはるばる来た甲斐があるという喜びを味わった。毎回違うメンバーとクルーを組み6日間漕ぐので、少なくとも24人との出会いがあるわけだ。期待に胸がふくらむ。名刺を用意してきたが、そんなものを交換するような野暮な人はいなかった。 まもなく開会式となり、代表のリコさんが歓迎の挨拶をする。スイス・ボート協会の会長ハンスさんが続く。式後に、リコさんと挨拶を交わすが、メールでDear Ricoと交信していたので、初対面ながらうち解けた話ができる。嬉しい出会いである。「人間、出会いは絶景」といった俳人がいるが、この開会式でのボート愛好家達との出会いは、はやくもその絶景を十分予測できるものだった。 今年の参加者は14カ国から80名。男女40人ずつだが、賑やかなおしゃべりと笑顔で女性が多いようにみえた。いかにもオアズマンという背の高い男性もいるが、ご婦人達はそのようにも見えない。年齢はほとんど50〜60代。矍鑠とした老人もいる。 <国別参加数>このなかに8組の夫妻が参加。そのうちの一組が岸田夫妻だ。 後で知ったことだが、一カ国15名を上限としているそうだ。また、このpleasure rowingがあまり知られていない国を優先しているようで、人気の高い国では選抜に漏れる人が多いという。日本ではまだあまり知られていない行事で、私たちにとっては幸運だった。主催国の参加は原則認めず、大会の運営に従事する。今回のスイス担当者はリコさん他12名。宿泊の世話から、艇の運搬、監視艇伴走、昼食ピクニック、写真撮影、観光案内と見事な支援活動だった。 来年以降の開催地も知ることになった。 2007年 アメリカ(コネチカット川、マンハッタン一周コース)ボートハウス前の野外開会式を終え、バスに乗り込んで湖岸南側中間地点のブオッホスにあるホテルに向かう。食事・宿泊料込みの参加費11万円から想像していたものよりずっと立派なホテルだった。湖畔からの眺めがすこぶる素晴らしい。すっかり観光気分に浸り、明日の漕艇の感動を確信する。ホテルは同宿希望をあらかじめ訊かれていたので、クニオさんと二人部屋に入る。ルームサービスもあり毎日ベッドメイキングもされていた。 歓迎晩餐会は、バスとゴンドラを乗り継いで標高1600メートルのクレヴェンアルプ山頂のレストランで行われた。山頂からの眺めはさすがはスイスというもので、明日から漕ぐ湖面が一望でき、遠くに峨峨たる山々が屹立しているのが見える。 適当に席に着いたところ、前に座った人が明日私の乗る艇のキャプテンだった。オーストラリアから来た60代のクリスとリネットの夫妻。ダンディーで気さくな紳士と淑女である。明日が一段と楽しみになってきた。 地元の人々による芸能が披露され皆大喜び。アルプホルンから始まり、ヨーデルの声が響き、ダンスには参加者も引き込まれて賑わった。漕艇だけでなくこんな観光サービスも盛り込まれていたのかと驚く。ありがたいことだ。素朴な地元住民の歌と踊りが長旅の疲れを忘れさせてくれた。 ホテルに戻り、ライフジャケットを約2000円で借用し、明日に備える。ライフジャケットは持参している人もいる。この種のツアには法的規制もあり欠かせぬものだそうだ。 長い長い一日が終わり、いよいよ明日から遠漕がはじまる。 |
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