桑野造船株式会社
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来た 見た 漕いだ!
漕艇2日目

9月4日合計33キロ(ブオッホス〜キュッスナハット〜ルツェルン・ボートハウス)

 6時起床、6時半朝食、7時半ホテル前から湖岸に降りれば、昨日のままボートが並ぶ。今日のキャプテンはマリリン(アメリカ)。自信に満ちた精力的な女性。"Vogalonga"ベニツィア・ボートマラソンでイチローさん達と一緒に漕いだ仲間で、ジャーナリズム出身らしい。来年のアメリカ主催の代表者だ。

クルーメンバーはスーザン(オーストラリア)、エマ(オランダ)、イスラエル(イスラエル、国名と同じ名前)。先の二人はとてもオアズウーマンとも見えない。どっしりした体格だ。イスラエルは75歳で、おどけた言動で皆を湧かしてくれる。排尿用ボトルを携えて30分ごとの休憩時間にひっそりと用を足そうとしているが、うまくいかんな、とこぼしていた。

ついでながら、女性の「花摘み」は、適当に艇を岸につけ、ひょいと木陰にかくれて済ませてくる。そんなことが数回あったが、何の遠慮も無く当然のことのようだった。

 マリリンが航路説明の後、号令用語はどうしましょうと言う。strokeside-bowsideがいいですか。それともport-starboardがいいですか。皆どちらでもというので、前者に落ち着いた。他の号令も、それぞれ人によって様々だ。日本でも大学によって異なる場合がある。Easy all!もLet it run!と言ったりしている。なかには競漕用語Attention. Go.を使う人もいた。ほぼ英語を使っている私たち日本人はあまり気にしなくてよさそうだ。

 さて、今日は最長の距離を漕ぐ。曇天ながら涼気あり気持ちよし。マリリンの整調で出発。目指すは湖北端のキュッスナハット。観光名所リギの麓を漕ぎ進む20キロコース。変幻自在の湖岸を眺める。途中イスラエルが「ハレルヤ」を高らかに歌い、皆に輪唱を呼びかける。皆、乗りがいい。湖面に歌声が流れる。マリリンはきっちり時間通り休憩をとりコックスを交代させる。交代時にエマがイスラエルの上を越えるが、彼女の胸が背に触れるらしく「ゆっくりいけよ」とイスラエルがうつむきながら叫ぶ。なんという爺様だ。

2時間半で湖岸公園らしき場所に到着。昨日と同じ昼食。ノリイチさんが先に到着していて一人でビールを飲んでいる。私もお相伴に預かる。やはりガス入り水より美味い。ノリイチさんは早速芝生の上に横になって昼寝。さすがpleasure rowing の先駆者である。

 午後は一時に出発。出会いの場所ルツェルン・ボートハウスに向かっての13キロ。この間の景色も抜群。白鳥が泳いでいるすぐ脇を漕ぐときには疲れも飛ぶ。クラシックな蒸気船が通り過ぎる。引き波が大きくざんぶり艇に入ってしまう。天気もいいし、いつでも休憩時にはカメラが出せるようにとビニール袋の上に載せてあったのが災いした。

カメラが水をかぶりシャッターが押せなくなってしまった。この後の絶景は目に焼き付けるだけにせざるを得ない。油断禁物だ。FISA Tour 常連は、ダイバーが使う防水袋を持参している。これは出し入れも簡単で、防水も完璧だ。

 2時間でボートハウスに到着。ビールとイタリア料理の一品が待っている。これぞ遠漕の醍醐味。ビールを飲めば口も軽くなる。仲間との話も弾む。我らがクルーは、イスラエル持参の強烈な酒が出され、銀杯で祝杯。今日のメンバーも競漕にはまったく興味なく、あちこちの遠漕に参加しているという。ノルウェーのフィヨルドだ、ポルトガルの200キロ川下りだ、カナダの大自然だ、と実に多彩な遠漕行事が行われていると知って驚くばかり。

イスラエルは、名字がアシュケナージだというので、NHK交響楽団の指揮で知られている名であり覚えやすい。夕食時に、記念にとずっしりしたスチール製のお守りをもらった。こんな風に、気のあった仲間とプレゼント交換をするものらしい。イチローさんが手のひらにゴムのイボイボがついた手袋を肉刺防止にどうぞと配って喜ばれていた。翌日、女性が「きのうはありがとう」と私の所に来る。いや、私ではありませんよ、と言うと、今度はクニオさんに礼を述べている。私たち日本男性は皆同じに見えるらしい。これが数回つづいて笑ってしまった。

 日本人仲間でも、岸田夫妻はやはり目立つ。FISA広報部員のインタビューに応じていた。「よくこんなに遠いスイスにいらっしゃいましたね。来年はアメリカですが、また参加しますか」と訊かれたコウスケさんが答える。「イヤー、お金がないからね。」ヨーコさんが「夢のない答えをしないでよ」とつぶやく。後で、公式見解を書面で提出したそうな。さてどんな記事が載るのだろうか。

 三時にあがったので時間がある。役員のマギーが欧州選手権レガッタコースであるロッツェー((Rotsee)に案内してくれるという。ルツェルン・レガッタで有名なので、てっきりルツェルン湖のどこかで行われるのかと思っていた。それにしては豪華客船が頻繁と就航しているのでいつどんな風に開催するのかと不思議だった。ロッツェーに行って見ると、それは噂に違わぬ見事な天然のコースだ。

普段は特別なジュニアクルーだけが練習に使用できるだけで、他には許可されない。両岸が鬱そうとした樹林で縁取られ牧草地が広がる。両岸共に小高くなっていてコースに風が吹き込むことはなさそうだ。ゴール地点こそ観客席が特設される広場があるが、あとは環境保護のために十分配慮された自然が広がる公園だ。地元住民自慢のレガッタコースであるというのも頷ける。

 街中で解散。岸田夫妻と別れ、クニオさんと二人でイタリア料理店に入る。今日もビールが美味い。手持ちCHFが少ないので、勘定しながら控えめに飲むのがちょっと淋しい。9時にバス停に皆が揃い、ホテルに帰る。

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