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移動日

9月6日バス移動(ルツェルン〜アフォルテルン〜首都ベルン〜ビール)

 今日は、次の遠漕地であるスイス西部3湖(ヌシャテル、ムルテン、ビール)に向かってバスで移動する。途中アフォルテルンのエメンタール・チーズ工場を見学し、世界遺産指定の首都ベルンを訪ねてから、宿泊地ビールのスポーツセンターに向かう。

 朝、バスを待ってホテル前の椅子に座っていると、つぎつぎとやってきた仲間が「おめでとう」と満面笑顔で言う。何のことかと思ったら、紀子妃ご出産のニュースをテレビで知ったという。日頃関心の薄い話題ではあるが、有り難く挨拶を受けて「サンキュー」を連発した。「日本を代表してきている感じがしますなー」とは同じく「サンキュー」と答えていたコウスケさん。

 チーズ工場での昼食はお楽しみだった「チーズフォンデュー」。食事前に、今日の誕生日ということで、3人に小さなプレゼントが渡された。続いて一本の花がヨーコさんに。紀子妃出産のお祝いに、というわけだ。

さて、名物料理を4人でひとつの鍋をかこむが、クニオさん、コウスケさん、私、それにカナダのリズ。フォークからパンを中に落としたら、男はワインをボトルでご馳走するが、女はキスすることになっているらしいよ、と言うと、リズは笑い飛ばして「お断り」。私は初めてのことで大いに満足。ワインが美味い。 ベルンの観光案内はガイドブックにまかせよう。

遠漕後半の宿泊地に到着。ビール湖北岸の高台マクリンゲンにあるスポーツセンター。予想していたよりもずっと立派なホテルともいえる建物。なによりも眼下にビール湖と最終日漕ぎ進む予定のアーレ川が静かに横たわり、遠くかすかながら白くたおやかなアルプスの山々が見える。暮れなずむビールの町に灯りがつきだし、なんとも贅沢な眺めで感嘆するばかり。

食堂はセルフサービスのカフェテリア風大食堂。宿泊室は二人用だが、シングルベッドと机が二つ揃っている。風呂こそないが、各室にシャワーが完備している。クニオさんの話では、この施設は国防省管轄とか。明日からここに3泊してドイツ語でSeeland、 英語ならLakelandといわれる3湖とアーレ川を漕ぐことになる。前半の湖一周とは違う楽しみがあるだろうとわくわくしがなら床につく。
漕艇4日目

9月7日合計27キロ(ムルテン湖〜スギエズ〜運河〜ヌシャテル湖エパニエル)

 今日が4日目の漕艇。漕艇よりも観光で市街を歩く方が疲れる。しかし、朝6時前に起床。クニオさんがまだ開けやらぬ早暁の空をみて感嘆の声を挙げる。「明けの明星ですよ。こちらは木星ですかね。」眼下にはビール湖の上に雲海が広がる。ほどなく曙光が空を染め始める。鋸の刃のように並んだアルプスの山なみが姿を現す。

7時半に集合し、バスで出発地点に向かう。この地特有の濃霧が続き、スイス第一の農園だというが、定かにはわからない。道路脇にトウモロコシやカボチャの直売所がある。

一時間ほどしてムルテン湖畔のムンテリエールに到着。スイスのこのあたりからフランス語圏になるので、地名もフランス語名になる。ビールはビエンヌとも呼ばれているのでややこしい。湖岸に既にリギングを終えた艇が並んでいる。FISAのデニス・オズワルド会長がローザンヌから参加し、歓迎の挨拶の後、Tシャツをプレゼントしてくれる。

 今日のキャプテンはエルンスト(カナダ)。長身の好々爺といった優しげな老紳士。スティッグ(デンマーク)、ビヴァリー(オーストラリア)、イングリッド(ドイツ)。まずは、私の整調で10時出発。湖面の霧が少しずつ晴れていく。時計回りにムルテン湖をほぼ一周する予定。昔訪ねた中国杭州の幽玄的西湖を思い出しながら漕ぎ進める。時々モーターボートと行き会うがそのあとの引き波が描く幾何学模様がどこまでも続いて美しい。

 ほぼ12時に到着したところがスギエズ。嬉しいことに既に陸上支援隊がバーベキューで肉やソーセージを焼いていていい香りが漂っている。先に到着した仲間は、早くもビール、ワインを飲みながらピクニックを始めている。今まで漕艇中は、Don't drink and row.のつもりだったが、これは抑えがたい。

 テーブルには、昨日訪ねたチーズ工場自慢の熟成チーズがどっさり置いてある。ワインはすぐ目の前に広がるブドウ園のブドウから作ったワインだという。これ飲みねえ、これ食いねえ、のスイス人の声が聞こえるようだ。ジェロームの本ではwater picnicとある語を丸谷才一氏が「遠漕」と訳していたが、これこそがwater picnicなのだろう。たっぷり食べて、たっぷり休む。

 午後2時に出発。エルンストが、整調をつづけたまえ、なかなかよく漕いでいるよ、と言う。嬉しいではないか。いくつになっても誉められれば舞い上がる。運河を通ってヌシャテル湖に向かう。岸は消波用の石が積み重ねてあり、その上の土手には柳などの樹木が生い茂る。土手を歩く小学生が挨拶の声を投げかける。牧草地が広がり、牧歌的な景色が静かに流れていく。

 ヌシャテル湖の入り口にカモメが並んで迎えてくれる。遠くに白鳥の大群が白く湖を染めている。水の透明度が高くどこまでも澄んでいて、まるでガラスの上を滑っているようだ。この湖は長さ38キロ、幅8キロで、全湖面がスイス領の湖としては一番大きいそうだ。仲間の艇もほとんど見えないほど広い。

 3時半、エパニエルに到着。一日中整調をこいだので達成感がある。舵手のビヴァリーとも会話が楽しめたので、疲れを感じないですんだ。ボートを引き揚げ、いつもの通りそこに置いたままにして、宿に帰る。

バス待ちの間、ストレッチをするクニオさんを見た仲間が、それはヨガか、と訊く。私がイチロー式股割ストレッチをしていると、スモウか、とイスラエルが言う。漕艇前も準備体操をする者がいない。たまにストレッチをしている姿をみるが、ほとんどの人はすぐ艇に乗っていた。専門的にボートに取り組んだりしていないからだろう。私が日本で買ったのど飴を皆に配り、喜ばれる。

 バスに乗り宿泊地のセンターに到着。総括責任者のリコさんが友人と見晴台でワインを飲んで語り合っている。さぞかし気苦労が多かろうと思うが、ゆったりしたものだ。あくせくしたり、いらついたりしていない。夕食はクニオさんとビールとワインで乾杯。

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